目に見えるものより、見えないつながりをデザインする。
櫻井 亮 Ryo Sakurai

東京情報デザイン専門職大学 准教授
「使える技術×広い教養」
それが、変化に乗っていく鍵となります。
今日の最新が、明日には過去のものとなる時代。
社会の動きに素早く対応し、常に活躍し続けられる人材とは?
本学 1 期生の二人が知能ロボティクスの権威である岡田先生に訊く。
学生:岡田先生の専門分野は知能ロボティクスですが、この領域を学ぶことにはどのような意義がありますか。
岡田:ここでは人工知能とロボットに関する授業を担当していますが、これは今の世の中で最も注目されている分野の一つと言えます。これから益々重要とされていく技術ですので、就職する際も必然的に有利に働くでしょう。
学生:私たちは二人とも、岡田先生のサポートのもと、知能ロボティクスに関わる企業プロジ ェクトに取り組んでいます。このプロジェクトには、どのような狙いがあるのでしょうか。
岡田:今回は株式会社デンソーウェーブとの産学連携で「店舗・工場で活用できるロボット開発 」という課題に取り組んでもらっていますよね。ロボットアームを利用して、⾝近なお店や工場で利用できるロボットプログラムを実施する、というテーマです。これに対して、二人がどのような計画を立てているのか説明してもらえますか。
学生:私たちのチームでは「⾝近なお店」というのを「パン屋」に設定し、店舗における一連の流れをロボットで自動化するプログラムをつくっています。できあがったパンを店に運び入れ、陳列し、客が選んだパンをアームで取り上げ、レジで会計するまでを 5 人で 1 工程ずつ分担し、全員のプログラムを組み合わせると全工程を無人化できるようになります。
岡田:中間発表を終えましたが、その後の進み具合はどうですか。
学生:今は少し足踏み状態です。やはりプログラミングが難しいですね、渡された資料が英語だったりもして。
岡田:それは当然難しいでしょうし、うまくいかないこともあるでしょう。それこそが、この企業プロジェクトの狙いでもあります。社会に出ると、最初からうまくいくことなんてほとんどありませんから。失敗を繰り返して、そこから何かを学びとるという姿勢を⾝につけることが大切です。企業プロジェクトというと、いきなり企業の戦力になる技術や製品の開発に携われると思うかも知れませんが、それは少し気が早過ぎますね。もっと手前にある大事なこと、実際の現場では物事をどう進めていくのか、どんなところに躓きがあるのか。失敗も含めて、学生のうちにいろいろな経験をしておこうというのが、この企業プロジェクトです。「できない」を学ぶ場なのです。実際に体験してみたら、教室で授業を受けるよりも、できないことを実感する場面が多いでしょう。
学生:そうですね。大学の授業では模範解答があり、正解か不正解かをすぐに答え合わせできますが、企業プロジェクトでは問題を出すところから自分で考えなければいけませんし、何をもって正解とするかも自分で決めていかなければなりません。そこがすごく大変ですが、やりがいを感じる部分でもあります。
岡田:二人は将来どういう分野を目指しているのですか。
学生:分野としては IoT ですね。小さい頃から車が好きで、車に関わる仕事をしたいと思っていました。車と IoT を組み合わせた自動運転の技術開発に携われたらいいですね。誰かの真似をするのではなく、自分が先頭に立って走り続けていく存在になりたいと考えています。
学生:私も分野で言えば IoT です。高校生の時にスマートシティについて学び、街という大きな規模で何かを創り出せるというワクワク感に魅了されました。社会インフラに関わって、多くの人々の生活の支えになれたら嬉しいですね。岡田先生はどうしてロボットの分野に進まれたのですか。
岡田:もともとの専門は AI でした。それでプログラミングばかりやっていたのですが、ある時プログラミングだけでなく実際に物を動かしてみたくなったのです。物を動かすといったらロボットだ、と思い立って今に至ります。
学生:これからこの分野を目指す人に求められるものは何ですか。
岡田:これはロボティクスや IoT に限らず、技術全般、社会全般に言えることですが、変化は常に起こります。今の最新はすぐにそうでなくなります。ですから、今学びたいことがあったとしても、ピンポイントでそれだけになってはいけません。TID は企業の最前線を実践的に学べる環境ですが、それはあくまで今現在の最前線です。皆さんが社会に出た時にそのまま活かせるわけではないのです。好きを追求するのは大切ですが、同時に基本的な教養を広く⾝につけておく必要があります。そうして世の中がどう変化したとしても柔軟に対応できるよう備えておくのです。大学というのは本来そういった広い教養を培うための場所ですよね。しかし、教養だけでは即戦力が育たないということで、 TID のような専門職大学ができました。実践的に使える技術と幅広い教養をうまくパッケージングした教育システムで、まだ始まったばかりですが、これが軌道に乗り出せば非常に優れた仕組みになっていくでしょう。
ルイス:私は岡田先生の研究室で一緒に研究に取り組んでいるのですが、わからないことがあ ったら私にも気軽に相談してください。ロボテ ィクスやコンピュータービジョンといった、今の企業プロジェクトの内容とかなり近い分野が専門ですので、何か力になれるかも知れません。岡田:ああ、そうですね。彼は研究員としてここにいるので授業は受け持っていませんが、画像認識とかロボットアームとか、この分野について教えられることは多いと思いますよ。
学生:ありがとうございます。心強いです。