目に見えるものより、見えないつながりをデザインする。
櫻井 亮 Ryo Sakurai

東京情報デザイン専門職大学 准教授
学生たちとともに、
成長し続けていく大学へ。
知識力や技術力は、どこにいても高めていける。
その先に求められる、人としての本当の成長とは?
常に学生視点で学びと向き合う志磨先生が本学 2 年生と語る。
学生:志磨先生は CG のプログラミング演習やゲームをつくる演習などの授業を受け持たれていていますが、この分野の学びにはどのような魅力がありますか。
志磨:私はもともとバンダイナムコスタジオという会社でエンジニアをやっていて、TID の開学と同時にこちらで教員として働き始めました。エンジニアとしての個人的な楽しさでいうと、やっぱり自分のプログラミングしたモノが意図通りに動作した瞬間や、イメージ通りのモノが画面に表示された時などは、面白さと喜びを感じますね。ゲームもそうですし、CG でも映像でもそうです。
さらに個人的なところから少し視野を広げて、業界や仕事全体で見てみると、ゲームや CG、映像というのはやはり日本が世界と有利に戦える、世界をリードしてしていくことのできる分野の一つだと思います。自分が開発に携わった製品やコンテンツを世界中のさまざまな人がみんなで楽しんでくれて、それを通じて世界がつながり合ったりもする。今ではユーザーの率直な声に簡単に触れることができて、もちろん厳しい意見を言う人もいますが、面白かったとか感動したという声が聞こえてくると、自分の仕事が人の心を揺さぶっているんだ、人生を動かすような体験を与えてるんだ、という不思議な感覚があります。すごい仕事をしてるんだなって感じますよね。
学生:確かに志磨先生の授業には、モノが動き出す時の感動がありますよね。最初は全然、思った通りに動かせなくて大変でしたけど。
志磨:コンピュータはプログラムに書かれた通りにしか動きませんし、1 文字の間違いでピクリとも反応しなくなったりします。そこはやっぱり慣れですよね。最初はモノマネからでいいんです。 コピペで動かしてみて、ちょっとずつ改良していくのを繰り返すうちに、何となく慣れてきて、仕組みがわかってきます。ミスにも気づきやすくなります。まず、内容を理解しつつ場数をこなすことが大事ですよね。
学生:この大学では産学連携の強化に力を入れていて、志磨先生も企業プロジェクトを担当されていますよね。そこには、どのような狙いがありますか。
志磨:私が担当しているのはセガさんの企業プロジェクトで「生成 AI を使った面白い遊びやエンタメを発表する」という課題に沿って進められています。最初は学生たちに任せて困った時だけサポートするつもりでいたのですが、参加者の多くは 1 年生でまだ「情報デザイン演習」の授業も受けていなかったりしたので、私もしっかり中に入って企画の立て方から一つずつ教えながら進めていく流れになりました。それでも、こんな考え方がある、こういう見方がある、という気づきを与えていけば、少しずつチーム間に共通の認識ができてきて、それをベースに議論ができるようになります。最終的には「自分たちでつくった」と実感できるようなモノに仕上がり、脱落者を一人も出さずに発表までたどり着くことができました。企業からもポジティブな評価をいただきましたが、何より学生たちの成長を近くで見届けられたのが嬉しいですね。
学生:志磨先生は一期生の私たちと同時期にここへ来られましたが、2 年近く見てきて、学生たちはどこか変わりましたか。
志磨:そうですね、知識とか技術は日々勉強を重ねているわけですから、時とともにより深まっていくのは当然ですが、それよりも人間的な成長に驚かされる場面が増えましたね。教員に言われなくても自分に必要なことを見つけて自発的に進めていたり、ここまでやれるんだと思わされることも多くなりました。そういう人は将来有望ですよ。このままいってほしいですね。そういった人間的な成長は、ここにいる二人にも感じているんですよ。
学生:私たちですか。どういったところでしょう。
志磨:この間の学園祭です。二人とも誰かに頼まれたわけでもなく学生委員会として自主的に学園祭の企画運営に取り組んだんですよね。
学生:そもそも学生委員会は、大学にあるいろいろな問題を解決していくために立ち上げたサ ークルなんです。ここは新しくできたた大学なので、正直まだ不十分なところも結構あるんですよ。カフェテリアの行列とか。その中で「学園祭をやりたい」っていう話も 1 年次からあ ったのですがなかなか実現できなくて。2 年になって「いざやろう」となったら、思った以上に負担が大きくてそこにしか集中できなくなってしまったんです。気がつけば学園祭実行員会になっちゃってた、という。
志磨:いやいや、学生が自ら学園祭を立ち上げるってなかなかないですよ。それだけですごく価値のあることだと思います。
学生:志磨先生にも企画にご協力いただいて。
志磨:「地域の方々とゲームで対決してください」という依頼だったので、それなら私にも協力できると思って引き受けたのですが、まさか4 時間ぶっ通しで闘わされるとは。
学生:お子さんをボコボコにしてましたけどね。
志磨:まあ、それは対戦ですから。じつはあの4 時間の中に、TID を志望して受験する予定だという方が二人いたんです。「ここでゲームをつくりたい」という人とゲームで対戦するというのは、なかなか感慨深い体験でしたね。あの時に、大学というのは学生がつくるものなんだと気づきました。学生とともに成長し続けていくものなのだと。