「情報デザイン」を日本に広めた人に聞く!情報デザインとは?

櫻井 亮 准教授(東京情報デザイン専門職大学)
担当科目:デザイン思考 / エスノグラフィ / 情報デザイン演習 / 情報デザイン実習Ⅰ / UI/UXデザイン
経歴:20年以上の実践を伴う組織変革の専門家。日本hpやNTTデータ経営研究所にて50社90以上のコンサルティングに従事。東京情報デザイン専門職大学ではデザイン思考やUI/UXデザイン、情報デザインの演習・実習を担当。
情報デザインとは?
一言でまとめると『ユーザーの困りごとを解決するデジタル時代の新しい価値創造の手法』のことを指します。
しかし、この一言でまとめると本当の意味が伝わりづらいのが現状です。情報デザインという言葉に注目が集まり始めた今こそ本当の情報デザインについて解説していきたいと思います。
はじめに:情報があふれる時代に求められる力

スマートフォンやタブレットなどの一人一人が手元で自由に扱うことができるデバイスが急速に普及している現在、私たちの生活は常にたくさんの情報に囲まれています。SNS、ニュース、動画、広告など、私たちが目にする情報の量は日々増加し続ける一方です。
新聞やテレビなど、決まった時間に決まった内容を一方的に受け取るようなメディアから、自ら内容を選択し、いつでも好きなものを手に取れるようなメディアが活躍する社会となりました。私たちの情報を選び取る力や整理する力がますます重要になっています。
そんな中、これからの社会をよりよく生きていく、仕事をしていくにあたって、与えられた内容から解答を導くという力に加えて、そもそも「一体、何が課題なのか」「解決すべき問いとは何なのか」「溢れ続ける情報をどう整理するのか」が注目されるようになります。そこで、近年、登場してきたのが「情報デザイン」という考え方です。
一度は聞いたことのある「情報デザイン」という言葉ですが、この「情報デザイン」がいったいどういう意味なのか、イメージしづらいと思われているのが現状のようです。
そこで、本コラムでは「情報デザイン」とはなにか、実際どのように活用されているのかについて、日本で最も早くからカリキュラムとして導入してきた大学の1つとして解説していきます。
情報デザインとは?定義と基本的な考え方

まず、「情報デザイン」とは一体なんなのでしょうか?「情報デザイン」について調べてみると、一般的には「情報を整理・構造化し、わかりやすく伝える技術」と説明されることが多いです。
ですが、敢えていえば、それは表層的な一部といえます。その本質は、「ユーザーの視点に立ち、潜在的なニーズを見つけ出し、それを形にすること」にあります。
まず「ユーザーの視点に立つ」とは、相手の立場や気持ち、状況を理解しようとする姿勢のことです。自分がユーザーだったらどう感じるか?と相手の気持ちに寄り添うことが大切です。
逆にユーザーの視点に立たないこととは、相手のことを考えずに自分本位で物事を進めてしまうことです。仕事で考えると、サービスの質や信頼に大きく影響してしまい、マイナスな印象を与えることになります。
ITなどを活用する「ものづくり」タイプの仕事や学習では、特に、作り手視点が強すぎてユーザー視点を忘れてしまう傾向が強いと言われています。
続いて「ニーズ」には特徴が2種類あります。
| 潜在的ニーズ | ユーザー自身がまだ気づいていないけれど、実は持っている欲求や必要性のこと |
| 顕在的ニーズ | ユーザー自身が気づいていて、直接欲求を伝えられること |
この2種類を学校の授業を例として考えると、「授業の内容を理解したい」という顕在的ニーズがあり、その中に「もっと楽しく学びたい!」「自分のペースで復習できるといいな」という潜在的ニーズが出てきます。
これに対して、先生が動画やクイズ形式の教材を使ったりグループワークなど工夫することで「楽しく学べる」「自分で何度も授業動画を見返せる」など、潜在的ニーズを満たすことができます。
最後の「形にすること」とは、伝えたいことを伝わるようにするためにテクノロジーや技術を活用して実装させることです。
頭の中で考えたことや情報を、見える・伝わる・使えるようにすることが「形にする」というであり、「形にしない」ことは考えや情報は頭の中にあるがそれを外に出していない状態のことです。形にするということは作品を作るだけでなく計画や提案するときにも必要なことといえます。
そして本学が考える「情報デザイン」とは、ユーザーや社会の困りごとを発見し、情報技術を使って課題を解決し、社会に新しい価値を生み出すための設計手法のことを指します。
デザイン思考とのつながり

情報デザインをもし深く理解しようとするならば、「デザイン思考」のアプローチの理解と習得が欠かせません。これは、ものごとの考え方を通常のアプローチとは違った形で理解する方法です。ユーザーを起点にして解決すべき課題を「発見」し、そこに仮説を立て、試作と検証を繰り返す一連の思考のプロセスでもあります。
現代社会はVUCA(ブーカ)と呼ばれ、不明確で複雑、曖昧な状態です。論理だけでは解決できない問題が多く存在します。だからこそ、ユーザーの感情や行動をよく観察し、そこにある問題や痛みに共感する力が求められます。そして、特定したポイントを起点として、正しい情報収集や分析を通じて、実現可能なアイデアへと導く必要があります。
つまり、ユーザーが真に求めていることを提供することが求められます。誰もが提供できるものではなく、あなたにしかできない「特別なもの」をユーザーに提供することを目指すアプローチとも言えます。
情報デザインの活用事例

①飲食店の配膳ロボット
たとえば、最近多くの飲食店で見かける配膳ロボット。料理を運ぶだけでなく、画面に表示される案内や音声ガイドによって、誰でも迷わず使えるように設計されています。ロボットとお客さんのやりとりだけではなく、社員さんやバイトさんでもこの配膳ロボットがうまく使えるし、一緒に働けるようにデザインされている。これこそが情報デザインの力です。
②Apple製品
また、Appleなどの製品にもふんだんに情報デザインの力が活かされています。iPhoneのホーム画面や設定メニューは、直感的に操作できるように設計されており、複雑な機能であってもどのユーザーが触っても大丈夫なほどシンプルに見せる工夫がされています。
③大手ECサイト Amazon
さらに、Amazonのショッピングサイトでは、価格、レビュー、在庫状況などが見やすく整理されており、購入までの流れがスムーズに進むように設計されています。
これらの「情報デザイン」は日常にあまりにも当たり前に提供されているため、その凄さが分かりにくいですが、つい10年前にはほとんどなかったもの、あっても非常に制御が難しかった領域です。つまりここ10〜20年で生まれてきた、新しい領域にこそ情報デザインが活かされています。
情報整理の手法「LATCH」とは?

情報デザインを検索すると重要ワードとして必ず出てくる「LATCH(ラッチ)」という言葉があります。
ユーザーの真に求めていること、困りごとを洗い出して、実装する段階で役立つ、情報整理の方法のことです。情報をわかりやすく表現し、有効的な考えの1つとして、この「LATCH」という手法があります。
これは、アメリカの建築家でありTEDの創設者でもあるリチャード・ソール・ワーマン氏が提唱したもので、情報を以下の5つの軸で分類・整理する方法です。
- Location(位置) 地理的な位置や空間に基づいて情報を整理する方法。地図や施設案内などが該当します。
- Alphabet(アルファベット・五十音順) 文字の順番で情報を並べる方法。辞書や電話帳など、探しやすさを重視した整理法です。
- Time(時間) 出来事を時系列で並べる方法。スケジュールや歴史年表などが代表的な例です。
- Category(カテゴリー) 類似する情報をカテゴリーごとに整理する方法。商品分類やタグ付けなどに活用されます。
- Hierarchy(階層) 重要度や大きさなどの順序に基づいて情報を並べる方法。ランキングや優先順位の提示に適しています。
(参考)規則性のある情報を整理することで「わかりやすさ」や「問い合わせ率」がアップ!?『LATCHの法則』
これらを組み合わせることで、情報の構造が明確になり、受け手にとって理解しやすくなると言われています。
ただし、大事なのはこのツールを暗記したり、順番通りに何かをこなす、ということではありません。情報を整理する前段階の「ユーザー起点」で考えること、困りごとを発見することに焦点を当てることなしにLATCHを活用しようとしてもあまり大きな効果が生まれません。
高校生にもできる情報デザインの学び方

情報デザインは、特別なスキルがなくても、日常の中で自分たちなりに気づくことから学習をはじめて、学ぶことができます。駅の案内板、教科書のレイアウト、スマホのアプリ画面など、身近なところに情報デザインを学習するヒントがたくさんあります。
CanvaやFigmaなどの無料ツールを使えば、ポスターや資料を作成しながら、自然と情報の見せ方や伝え方を学ぶことも可能です。
日本初、「情報デザイン」を4年間学べる東京情報デザイン専門職大学で、情報デザインを学ぼう!

東京情報デザイン専門職大学は、日本初の「情報デザイン」を冠した大学として2023年に開学し、情報デザインエンジニアを育成するために1年次から4年次まで学問として「情報デザイン」を学ぶことができます。
情報工学系の学びをベースに、IT・IoT・AI/データサイエンス・セキュリティ・CG・ゲームの6分野を2年次から選択し、専門的に学べます。1年次からデザイン思考を取り入れることによって、大学内の施設改善や地域の飲食店との連携など、実社会の課題に取り組むプロジェクトを実施。RFP(提案書)の作成練習や、3・4年次の長期インターンを通じて、実装力や共感力を育成します。
授業では情報デザインの考え方を学びながら、技術力とユーザー視点を融合させ、真に求められる価値を形にする力を養成。TIDでは、情報を収集・分析し、社会の本質的なニーズを見極め、情報技術を活用して課題解決へ導く力を育てる教育が行われています。
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おわりに:情報デザインは未来をつくる力

情報デザインは、単なる視覚表現ではなく、人と情報の関係をより良くするための設計です。本学が目指す情報デザインでは、社会に新たな価値を生み出し、人々の行動を支える力を持っています。
高校生の皆さんも、日常の中で情報の整理や伝え方に意識を向けることで、情報デザインの第一歩を踏み出すことができます。未来の課題解決者として、情報デザインの力を育てていきましょう!
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